山吹は、春になると黄色の花を咲かせる低木です。
この花の色は「山吹色」の由来でもあり、一重咲きや八重咲きの花が楽しめます。
丈夫で、地植えにすれば植え替えの必要もない育てやすい植物ですが、「山吹は庭に植えてはいけない」と言われる木のひとつです。
山吹を庭に植えてはいけない1番の理由は、縁起が悪いから。
結論を言えば、「山吹は縁起が悪いから植えてはいけない」というのは迷信です。
実は、山吹には縁起がとても良いとされることもある植物でもあります。
ですから、山吹はお庭に植えても問題はありません。
ただし、管理の面で注意する点があるので、植える場合は気をつけましょう。
この記事では、山吹を植えてはいけない理由と、植える時の注意点を解説します。
山吹を植えてはいけない理由
山吹を植えてはいけないと言われる理由は以下の3つ。
縁起が悪いから
山吹は縁起が悪いと言われるのは、「山吹には実がならない(種がつかない)ため、子どもができず、子孫が途絶えるから」だと言われています。
しかし、これは迷信です。
実際のところは、全ての山吹に実がならないのではありません。
八重の山吹には実がなりませんが、一重の山吹には実がつきます。
実がつく山吹があるにも関わらず、「山吹に実がならない」という迷信が広まったのは、兼明親王の古歌と太田道灌の逸話が広まったためです。
兼明親王が詠んだ有名な古歌とは、「七重八重 花は咲けども山吹の 実の一つだに 無きぞ悲しき」というもの。
この古歌は後に太田道灌(おおたどうかん)という武将が歌道に励むようになったきっかけの歌で、太田道灌と山吹の逸話は落語や浮世絵になっていたり、戦前の教科書にも載せられた有名な話です。
『日本史大事典 1』平凡社, 1992【210.03/92Y/1タR】
引用元:レファレンス協同データベース
pp.1071-1072「太田道灌(おおたどうかん)」の項に下記の記載があります。
「(前略)道灌が鷹狩に出て雨に遭い、蓑を借りようとしたとき、若い女に山吹を差し出され、それが『七重八重花は咲けども山吹のみの一つだになきぞ悲しき』という古歌(『後拾遺集』雑)の意だと後で知り、無学を恥じたという逸話は『常山紀談』や『雨中問答』(西村遠里著、一七七八)等に記されて著名。(後略)」
そのため、古くから「山吹には実がつかない」ということは知られていました。
当時の一般家庭に植えられていた山吹も、歌に詠まれた山吹と同じ種をつけない八重の山吹が多かったため、縁起が悪いとされたのです。
地下茎で増えるから
山吹を植えてはいけない理由の2つ目は、地下茎で増えていくから。
山吹は、地植えであれば植えたままで何年も育てられますが、毎年株元から新たな芽が出ます。
何年も経過した大きな株になると、植えた場所より離れた場所からでも芽を出すので、放っておくと株が増えていきます。
そのため、地植えではあちこちから伸びた芽を抜く作業が必要です。
山吹は手に追えないほど増えていく植物ではないため、お庭に植えても問題ありません。
しかし、勝手に増えない植物が良い人にとって、山吹の地下茎で増える性質はデメリットと言えます。
枝が広がりすぎるから
山吹を植えてはいけない理由の3つ目は、枝がどんどん伸びて広がりすぎるから。
山吹は樹高が1m~2mほどの低木で、剪定があまり必要がないと言われる植物です。
しかし、花後から夏にかけて枝をどんどん伸ばすので、放っておくと縦にも横にも大きく広がってお庭を圧迫してしまいます。
また、枝の寿命が短く、その年に伸びた枝からしか花を咲かせません。
何年も育てた山吹の古い枝を残したままにしていると、花数が減って見た目も悪くなります。
山吹は縁起が悪いというのは迷信!縁起が良い点も
山吹が縁起が悪いと言われるのは、古歌や故事が広まったことによる迷信です。
山吹は風水や花言葉では縁起が良いとされる植物です。
山吹が縁起が良いとされる理由は以下の2つ。
金運を高めてくれる
山吹は、風水では財運や金運を高め、活力を与えてくれると言われています。
風水において、黄色は陽の気が強い色であり、活力を与えてくれる色です。
その中でも、山吹の鮮やかな黄色は稲が実った時の色であり、山吹色は黄金や小判の色のことを指します。
そのため、風水では山吹は金運アップの効果が強いとされています。
品格のある花言葉が多い
山吹の花言葉は「気品」「崇高」「金運」「待ちかねる」。
ネガティブなイメージの強い花言葉はなく、品格のある花言葉がつけられています。
これは、山吹色が古くから平安時代に貴族たちの装束に好まれて使われていたためです。
「金運」の花言葉は、谷底に落とした金貨が山吹の花に変わったという言い伝えが由来と言われています。
山吹を植える時の注意点
山吹をお庭に植える時の注意点は以下の3つ。
迷信と関係のない一重の山吹を植える
山吹を植えると子孫が途絶えるというのは迷信ですが、「山吹は実がならないから、子どもに恵まれない」という言葉が心配なら、一重の山吹を植えましょう。
迷信の元になった山吹は八重の山吹であり、一重の山吹には実がなり、種ができます。
縁起を気にせずに育てられますよ。
剪定をする
剪定があまり必要ない山吹ですが、放っておくと枝が伸びて広がってしまいます。
大きくしたくないのであれば、剪定をして枝が広がらないようにしましょう。
枝の途中で切り落とすと枯れる場合があるため、枝の根元から間引くように剪定します。
山吹の剪定は花後の5月~6月の間に行います。
ただし、山吹の花芽は夏のうちに作られるので、夏を過ぎてから強剪定すると翌年の花が咲かなくなるので注意してください。
株の更新をするために大きく切り戻す場合は、数年に一度、12月から3月の間の休眠期に行います。
ヤマブキの剪定に困ったら、プロに頼むのが安心です。
地下茎で広がるのを防ぐ
山吹があちらこちらから芽を出すのを防ぐためには、地下茎が広がるのを防ぐ必要があります。
根止めシートやフェンスを使って地下茎が広がるのを予防してください。
芽が出たら早いうちに抜くことも大切です。
まとめ
縁起が悪いと言われる山吹ですが、迷信なのでお庭に植えても問題はありません。
山吹を大きくしたくない時は、剪定をして枝が広がりすぎないようにしましょう。
山吹の花は季節を感じさせてくれます。
暑さや寒さにも強い丈夫な植物なので、ぜひ育ててみてくださいね。